知りたいのは、キレイゴトよりホントノコト、キラキラよりコツコツできること。
誰もが起業するときは希望や夢に溢れている訪問看護。しかし実際に経営・運営が始まると心が折れるくらい色んな壁にぶつかるステーションがほとんどです。
この「訪問看護ぶっちゃけ相談室」では、訪問看護レセプト代行サービスをご利用のステーション様からのインタビューを中心にリアルな運営・経営の取り組みや考え方をご紹介していきます。
今日は、訪問看護レセプト相談室のお客さまであるステーションの採用担当者Aさんにお話を伺います。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
Aさん: こんにちは。西日本で複数の訪問看護ステーションを運営しているA社の採用担当です。私は本社で採用活動を行っています。複数の拠点はありますが、業界的には大きな訪問看護ステーションではありません。訪問看護業界ではいろんな成功事例が溢れていて「こんなことをしたら採用がうまくいった」「すぐ効果が出た」という話が多いのですが、私は実際のところ小さな変化と努力を重ねることが重要だと思います。今日はそういったお話をしたいと思います。
具体的に採用活動とはどんな業務を行うのでしょうか?
Aさん: はい。採用は主にいくつかのフローごとの業務に分かれています。まず、応募を集める業務、つまり募集をかけて応募の数を取る業務。次に、応募が来た方を面接に誘導する業務。そして面接する業務ですね。面接ではもちろん実際に現場に出ている看護師さんやセラピストさんが仕事内容を説明し、応募者に「この会社で働きたい」と思ってもらうことが重要です。最後に、条件面などを交渉してスムーズに入社を整える業務を経て合意を形成し、入社に至ってもらうまでが全体の流れです。
なるほど。訪問看護ステーションでは、通常1人がすべての採用活動を担当することが多いと思いますが、それについてどう思われますか?
Aさん: 確かに、多くの訪問看護ステーションでは1人が募集から面接、入社後のフォローまでを担当するのがほとんどだと思います。これは効率的ではないかもしれません。先に挙げた採用活動の4つのフローは、それぞれ得意な人が担当する方のがいいんじゃないかと思います。例えば、宣伝するのが得意な人には応募を集める業務を、面接が得意な人には面接を・・・といううように分業してもらうのがいいように思います。
起業まもないステーションだと分業もすぐには取り組めないと思いますが、「全部のフローを一人でこなすことは本来難しいことだ」と理解するだけでだいぶ気が楽になるんじゃないでしょうか。
具体的にはAさんの会社はどのように分業していますか?
Aさん: 例えば、募集をかけたり面接に誘導したりする業務は事務方が、応募が来た後の面接は看護職・管理職が行います。また、入社後のフォローは別の担当者が行います。わかりやすくいうと、看護職の方が現場に出る時間を割いてまでスカウトメールを送ったり、人材紹介会社とやり取りしたりするのは効率が悪いので、看護職でなくてもできることはルールだけ決めて事務方が担当する、という方が効率的だいうことですね。
なるほど。Aさんの会社の採用活動の実績を教えていただけますか?
最大で1年間で17人のスタッフを採用することができました。もちろん直接応募や経費のかかる採用もあるので、一人あたりの採用コストは40万円程度でした。特に何か目新しいことをするわけではなく、スカウトメールが送れる採用媒体なら上限まで使い切る、掲載文章をマメに更新する、ホームページやSNSなども大したことは書けなくてもトライアンドエラーしながらコツコツ内容を変えていくということは意識していました。
看護師の平均採用コストは90~100万円という統計もあるので、効率的な採用ができたわけですね。他にも具体的な取り組みがあれば教えてください。
はい。他には、多くの人材紹介会社の担当者と連絡を取り合うことで、採用環境や待遇の相場について新しい情報を入手し、募集要項をブラッシュアップしていきました。高額なコストがかかるので賛否はある人材紹介会社ですが、自分にできないことをサポートしてくれる外部スタッフだと割り切れば費用対効果を上げることはできると思います。また、ホームページでも少しずつ採用や訪問看護に転職を希望する方に知っていただきたい情報を増やしました。
最近はSNSなどで積極的に情報発信してスタッフ募集しているステーションも増えていますね。
スタッフの人たちがSNSで皆で笑顔でニコニコして、「我々と一緒に理想の看護を追いかけましょう」と呼びかけることは、本当に素晴らしいことだと思います。実際、そういった活動をすることで応募率も上がると思います。ですが、それは全てのステーションができるわけではありませんよね?
職場の雰囲気や経営者のスタンス、キャラクターも含めて、そういったキラキラしたイメージを見せることが難しいステーションも多いのが実情でなないでしょうか。
私たちの経験から言うと、SNSでの情報発信が苦手なステーションであっても、できることはたくさんあると思うんです。例えば過去にスカウトメールを送り、反応がなかった応募者にも、2回、3回と繰り返しスカウトメールを送るとか。実際に3年間で8回スカウトメールを送っていた方が、タイミングが来て応募・入社してくれたケースもあります。キラキラした素敵なメンバーの写真を掲載して採用の情報発信をできるようするには時間がかかりますが、コツコツと出来ることを積み上げていくことは誰でも今すぐできるわけです。それこそ1日15分でも時間を割けば、半年もするころには大きな差が生まれているはずです。
vol.2に続く