訪問看護の採用

採用活動のリアル Vol.2 採用コストの考え方と人材紹介会社との付き合い方

知りたいのは、キレイゴトよりホントノコト、キラキラよりコツコツできること。
誰もが起業するときは希望や夢に溢れている訪問看護。しかし実際に経営・運営が始まると心が折れるくらい色んな壁にぶつかるステーションがほとんどです。
この「訪問看護ぶっちゃけ相談室」では、訪問看護レセプト代行サービスをご利用のステーション様からのインタビューを中心にリアルな運営・経営の取り組みや考え方をご紹介していきます。
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前回の記事に続き、訪問看護レセプト相談室のお客さまであるステーションの採用担当者Aさんにお話を伺います。訪問看護師を採用する際、どのような採用媒体や方法を選ぶべきか、多くの方が悩まれると思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか?

Aさん: そうですね、まず訪問看護師の採用で一番ありがたいのは、やっぱり直接採用ですよね。ホームページやSNSから直接応募が来るっていうのが一番コストもかからないし、経営している側からすると一番望ましい形なんです。でも、現実的には、それを当てにするのは難しいところがあります。直接応募がたくさん来るっていうのは、正直なところ、あまり期待できないんですよね。確率的にも、そんなに高く狙えるものじゃないと思います。

中には、戦略的にSNSを活用して、例えばInstagramやTikTokで看護スタッフや社長さんたちが顔を出して、時には踊ったりして「うちのステーションはこんなに楽しいよ!」っていう雰囲気を見せるやり方もあります。それで応募を集めるっていうのも一つの手だと思います。でも、前回のインタビューでもお話ししましたけど、これってどこのステーションでもできるわけじゃないんですよ。すべてのステーションが同じようにSNSを活用して成功するわけではないんです。

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直接採用が難しい場合、一般的な公募媒体や人材紹介会社を利用することになるかと思いますが、その際の課題についてもお話しいただけますか?

Aさん: 直接採用が難しい場合、次に考えるのはやっぱり公募媒体や人材紹介会社を使うことになると思います。まず、公募媒体なんですけど、無料で使えるものとしてはハローワークなんかがありますが、ハローワークからの応募ってあまり期待できないんですよね。特に、一般の方や求職者の目につきにくいっていうのが現実で、そこからの応募が少ないっていうのが悩みの種です。

あと、有料の公募媒体もありますよね。例えば、「1週間掲載したらいくら」とか「2週間掲載したらいくら」とか、そういう料金設定のものです。でもこれもね、費用対効果が読みにくいんですよね。私たちの経験では、開業時に数十万円をかけて1ヶ月間ほど募集広告を求人媒体に掲載したことがあるんですけど、その時は採用がゼロだったんです。本当にショックでしたよ。だから、公募媒体を使うなら、費用が発生するのは採用が決まったときだけっていう、成果報酬型の方が安心ですね。有名なところではジョブメドレーなんかがあります。掲載自体にはお金がかからないし、掲載後はインターネット上で媒体側が広告をかけて宣伝してくれるので、そういうメリットもありますね。

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公募媒体に比べて、人材紹介会社を利用する場合の利点やリスクについても詳しく教えていただけますか?

Aさん: 人材紹介会社を利用する場合、やっぱり費用が高額になるのが大きなポイントですね。1人採用するのに、正社員だったら100万円から120万円くらいかかるのが一般的です。これは、その人の理論年収の25%から30%が成果報酬として発生するためなんですけど、これが大きな負担になるんです。

そして100万円かけて採用した人が、いざ入社してみたら1週間や2週間で辞めちゃった、なんてことがあるんですよ。これが一番痛いんです。特に小規模なステーションで、人材紹介会社を使って1人だけを採用するっていうのは、かなりリスキーな賭けになるんですよね。

ここで大事なのは、年間の採用計画をしっかり立てることです。例えば、「今年は5人採用しよう」と決めて、そのうち1人は人材紹介を使って、2人はジョブメドレーのような成果報酬型の公募媒体で採用する、あと2人は直接採用を目指す、といった計画を立てます。こうすれば、現実的な目標と予算管理で計画的に採用が進められると思います。

会社がまだ小さいうちに人材紹介を使うのは、リスクが高いですね。まず、給与制度や評価制度、研修制度がしっかり整っていないと、せっかく採用してもすぐに辞められてしまうリスクが大きいです。特に、ステーションを立ち上げたばかりの場合は、まだ制度が整っていないことが多いですからね。人材紹介を使って採用しても、その人が会社に入った後で「なんだかここは不安だな」と感じて、すぐに辞めてしまうことが多いんです。

訪問看護を立ち上げる際の初期メンバーは、人材紹介会社を使わず、社長や管理者の知り合い、友人で構成することが一般的ですが、その後は、新しい人を迎え入れる準備として、人事制度や労務制度を整えることが必要です。この準備ができて初めて、人材紹介会社を利用するべきです。
採用活動は、組織の健全性を保つための重要な要素です。会社の制度が整っていない状態で新しい人を採用すると、組織としての出血が止まらず、採用した人がすぐに辞めてしまうことになります。そのため、まずは制度を整え、組織の出血を止めることが重要です。これには、事務作業や訪問業務を他のスタッフに任せるなどして、時間と労力を作り、会社の体制を整えることが必要です。専門家を活用し、法律に則った人事労務制度を構築することも重要です。これにより、安定した採用活動を行い、採用した人材が長く働き続ける環境を整えることができます。採用活動は単なる人員確保ではなく、組織全体の健全性を保つための戦略的な取り組みですから。

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人材紹介会社を利用するか悩む訪問看護ステーションさんも多いのではないでしょうか?

Aさん: 人材紹介会社との付き合い方なんですけど、正直、訪問看護ステーションの多くは「できれば使いたくない」と思っているんじゃないでしょうか。やっぱり、100万とか120万もかけて人を採用するのは、なかなか大変なことですからね。できれば自社に直接応募してもらいたいっていうのが本音だと思います。でも、インターネットでの宣伝力や、人材紹介会社が持っているパワーを考えると、全く付き合わないっていうのも厳しい現実があると思うんです。

たとえば、ステーションが大きくなって、1年間に3人、5人、さらには10人を採用しなければならなくなった場合、直接採用だけではなかなか厳しいんです。直接採用がうまくいっているところはそれでいいんですが、ほとんどのステーションはそうではない。だから、どこかの段階で人材紹介会社と関わらなければならない時が来るんですよね。ただ、その関わり方が重要なんです。

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人材紹介会社との関わり方のコツを詳しく教えてください。

Aさん: 人材紹介会社にやみくもに頼り切るのは、資金力がないとかなり難しいですし、採用してもすぐに辞めてしまったら、結局お金が出ていくだけになってしまいます。だから、自分たちにできない部分を人材紹介会社にやってもらう、というスタンスで考えるといいと思います。
人材紹介会社の担当者としっかり話をすることで、今の訪問看護業界における採用の相場や成功事例なんかも教えてもらえますし、その担当者をある意味でコンサルタントのように活用するのも一つの手です。また、採用の制度が整っていないときには、人材紹介会社に募集を出す際にかなり厳密な募集要項を作る必要があります。その際に、担当者にヒアリングしてもらいながら、募集要項を整えていくことも可能です。
繰り返しますが、たった一人を採用するために人材紹介を使うのではなく、年間で3人とか4人を採用する中で、そのうちの一人か二人を人材紹介を使うという方が、使い方として正しいと思います。人材紹介会社っていうのは、ある意味で人事部門の外注なんですよね。自社で人事部門や採用担当者を雇うとなると、ものすごくお金がかかりますが、それを部分的に外注することで結果的に100万とか120万を払うのも一つの手だと思います。
また、人材紹介会社の営業マンも人間ですから、彼らとの良好な関係づくりが大事です。営業マンに「うちのステーションはしっかりお金を払うし、いい人を紹介してくれれば、その人材を大切にする」っていう信頼感を持ってもらえば、結果としていい人材を優先的に紹介してもらえるんですよ。結局、営業マンにとっても、しっかり採用してもらえて、成績に繋がるところに力を入れたいわけですからね。そのためにも、我々のステーションは1年間でこれだけお金をかけてこの人数を採用しますよっていう計画を営業マンに伝えることが重要です。そして、「この代わりにいい人を紹介してほしい」「こんな人が欲しい」っていうモデルをしっかり打ち合わせて、採用活動を進めることが大切です。それで打率が上がれば、投資したお金も無駄にならないですし、より良い採用活動ができると思います。

一番避けたいのは、人材紹介会社と契約して、キャリアシートが送られてきて、すぐ面接して、「この人いいですよ」と勧められて、そのまま採用を決めてしまうことですね。これだと、選択肢が狭まり、良い人材に巡り合う確率が低くなります。採用活動も計画的に進めて、「一定期間の間に決める」とか「面接を10件行ったら決める」とか、ある程度のルールを設けて進めることが必要です。彼らを単なる外部のリソースと見なすのではなく、良好なパートナーシップを築くことが大切です。そうすることで、こちらのニーズに合った良い人材を紹介してもらえる確率が高くなります。そして、彼らとの関係を大切にしつつ、信頼関係を築いていけば、それは必ず良い結果に繋がると思います。人材紹介会社からの電話が多くて困っているという声も聞きますが、それが負担になる場合は、「すべてメールでキャリアシートを送ってください」とか「電話は控えてください」といったルールを設定して、採用活動が負担にならないようにすることも大事ですね。
100万円、120万円といった成功報酬の考え方ですが、これは本当に様々な見方があると思います。例えば、1人を採用するのに10人の中から選んだ1人なのか、それとも2人の中から選んだ1人なのかでは、価値が全然違いますよね。人材紹介会社を使えば、10件、20件の応募やキャリアシートを得ることができ、その中から選ぶことで、より良い人材を採用できる確率が高くなります。ですから、大量の応募の中から選んだ良い人材に対して、100万円とか120万円のコストを支払うことが適正かどうかを考えるべきだと思います。

vol.3に続く


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